むかし、庭には立派な椿の木があった。 それは祖父のお気に入りの椿だった。 ある年、東京に大雪が降った。 庭に敷き詰められた白い雪は美しくきらめき、その上に椿の大輪がいくつも落ちていた。 子供心に鮮烈な情景だった。 雪上の椿 仁王の服の端を掴んだ。 それが合図だった。 仁王の長い指が、少し寝癖の残った髪の毛に触れて、頬に触れて、唇に触れた。 柳生の唇にジン、とした甘酸っぱい痛みが走る。 仁王に触れられた肌が粟立って、何だかくすぐったい。 「今日、両親と妹が出かけていないのです。遊びに来ませんか?」 誘ったのは柳生だった。 深い意味が無かったと言えば嘘になる。 それでも初めて受け入れる恐怖は否めなかった。 両足を開き誰にも見せたことのない体勢で、仁王の舐め回すような視線に全てを晒した。 屈辱がまた快感を生む。 柳生にはマゾヒストな部分があった。 勃起した性器の先端は先走りでぬらぬらと濡れていた。 仁王の手に包まれて扱かれるとすぐに達した。 射精の快感は慣れない身体には強烈だった。 「あ…ン、やっ、ああっ」 弄られるとあられもない声をあげて喘いだ。 「仁王君、仁王君、あ、あ、やっ…」 何度も仁王の名前を呼んだ。 どうしようもない気持ち良さに死ぬかと思った。 身体はビクビクっと何度も痙攣して、腹に精液を撒き散らした。 目尻からは幾筋も涙が伝う。 柳生は必死に仁王にしがみついた。 そうしないと落ちてしまうと思ったから。 そしてとめどない快楽に悶え、腰を振りたくった。 けれどとろとろになったところに、仁王の凶器がぶちこまれると一変する。 柳生が叫びつくし暴れても、仁王は容赦なかった。 柳生は恐怖を覚える。 先ほどまで快楽を与えてくれた人間とは思えなかった。 泣いて泣いて泣き叫んで、声が枯れるほど訴えても仁王はやめなかった。 痛みで感覚は麻痺し、柳生は壊れた人形のように腕をシーツに投げ出した。 怒張が何度も後孔を出入りし、それを拒絶する肉襞が更に締まって仁王に痛みと快感を与えた。 仁王は柳生の中に何度も精を、欲望を吐き出し、処女の身体を存分に味わいつくした。 この日、柳生は男でありながら女になった。 白いおろしたてのシーツは、鮮血に染まっていた。 それはまるで、幼い頃にみた雪上に散った椿のようだった。 終 (2005.10月オンリー発行ペーパーより再録) |
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