男の味を覚えた仁王はしつこかった。 練習があろうとなかろうと、挿入を強要される。 彼はとても巧みだった。 柳生の口から漏れる声も、うめき声ではなく甘い喘ぎに変わり 行為も次第に苦痛だけではなくなっていった。 そして苦しみが始まる。 柳生の気持ちを無視して、綻んだ花は確実に雄を受け入れていた。 二年間 - 第6話 - 二人はなるべく家族のいない時間を選んで、互いの家でこっそりことに及んでいた。 それは暗黙の了解だった。 けれど、今日は違っていた。 家に妹がいる。 そればかりか妹の友達までもが来ている。 だからできないと訴えたけれど、仁王は我慢ができないようだった。 「お願いですから、今日は…今日だけは無理です」 「うるさいわ。オマエが声出さんかったらエエだけじゃろ」 「…無理ですよ。声を抑えるなんて」 「アー、そうじゃろな。オマエうるさいぐらい善がるしの」 別にからかいではなかったけれど、頬に朱が走る。 何も言い返せなくて俯いた。 「ンじゃ、口塞いだらよかね」 仁王はそう言うとネクタイに手をかけた。 シュルシュルと制服のネクタイが外されて、猿轡をかまされる。 「ンぐっ…」 苦しくて咽そうになる。 「これでエエじゃろ。騒ぐなよ」 仁王は満足したように笑うと、柳生に乗り上げて服を脱がし始めた。 (最低な人だ…) そう思っても力でかなわないことはとうのむかしに判っていて、柳生は抵抗しなかった。 すればきっと殴られる。 今の柳生にはそれが怖かった。 自分にできることは、ただ家族にばれないようにと我慢をすることだけ…。 柳生はシーツに腕を投げ出すと、ぎゅっと目を閉じる。 悔しさにそっと唇を噛み締めた。 何かが身体の内側で濁流のように暴れていた。 まるで火山噴火の溶岩みたいに、熱くて焼け付きそうだ。 仁王を受け入れた場所から全身が焼け爛れそうなくらいの熱が生まれていた。 「ン…、う、ンン…」 繋がった場所からぬちゅぬちゅと濡れた音がしている。 慣れきった内部の粘膜を擦られると、そこから止め処ない快感が溢れた。 (気持ちいい…) 口を塞がれていて良かったと思う。 もし開いたままだと何を口走ったかわからない。 隣に家族がいる中での行為。 その緊張感に激しく燃えていたのだ。 身体がいつもより何倍も敏感になっている。 「オマエ、…いつもより興奮しとらんか?」 図星だったけれど、あえて指摘されると恥ずかしかった。 けれど認めたくなくて首を左右に振って否定すると 「フーン…。けどココの締め付けかなりスゴイぜよっ、と」 と、奥を強く突き上げられた。 (あ、駄目っ) 「ンー…!」 油断していたところへの刺激に、ビクビクと身体が戦慄いて思わず達してしまった。 自分の腹は噴き出した精液で汚れる。 仁王はニヤついて 「変態」 と、囁いてきた。 「親とか妹が知ったらどうするんじゃろうな。 お兄チャンはケツにちんこぶっこんでもろうてイキまくってます、って言うと?」 射精感にとろんとなった表情が一気に青褪める。 「ンン、ンン」 (そんなこと、やめてください!) 言葉にはできないので、縋り付いて必死に目で訴えた。 仁王はいいかもしれないが、自分はこんなことを人に知られてしまったら生きてはいけない。 仁王は腕を振り払いながら 「別に人に言いやせんよ。できんなったら俺も困るしのう」 と言って、抽挿を再開した。 (…え?) 柳生は自分の耳を疑った。 今、仁王は確かに「困る」と…。 「ん…、ンン…ッ」 激しい突き上げに揺れる自分の両足をぼんやりと眺めながら、言葉の意味を探った。 どうして困ると言うのか。 仁王は女子からも人気があるし、柳生に固執する必要はない筈で。 だから面白がって自分をからかっているものだとばかり思っていた。 男に犯されて感じている姿を楽しんでいるだけだと。 けれど、それは勘違いだった? (…わかりません。仁王君がわからない) 仁王に視線を移した。 その頬は紅潮している。 そして眉を寄せて何かに耐えているようだった。 その表情からは普段の意地悪さも余裕も何もなかった。 セックスの快感に夢中になっている雄の表情だ。 仁王もまた感じているのだ。 不思議な気分だった。 男だから当然と言えば当然だけど、自分の身体の上でせっせと腰を振る姿は滑稽でもあった。 「ンっ、んっ、うっ…」 限界が近いのか突き上げが激しくなる。 中を掻き回されると、いつの間にか再び擡げていた熱がもう一度達しそうになる。 (まだ、もう少し…) イクまいと柳生は腹に力を込めた。 切羽詰っている姿を見ていると、何故だかわからないけど胸が締め付けられた。 彼の表情をもっと見ていたい。 けれど我慢したのが仇となった。 力を入れたことで、仁王の怒張に絡み付く肉襞が不意打ちで締め上げてしまった。 「ウっ…――!」 と呻いたかと思うと、仁王は身体を痙攣させて達する。 まさかイクとは思ってもいなくて、柳生は一瞬唖然とした。 仁王は全身から汗を流して、ぐっと唇を引き結び顔を歪めて堪えていた。 何度も身体を繋げ合っていたが、仁王が達する瞬間を見たのはこれが初めてだった。 胸の中に不思議な感情が流れ込む。 手を伸ばして、汗に濡れた仁王の頬に触れた。 振り払われるかと思ったけれど、仁王は何も言わなかった。 ハアハアと乱れた呼吸を整えている。 暫くすると収まったのか、仁王は再び覆いかぶさってきた。 抜かないままの2回目突入も、柳生は抵抗する気持ちはなくなっていた。 この気持ちが何なのかはわからない。 けれど、今はこうしていたい。 仁王の背中に両腕を巻きつける。 そしてそっと瞼を閉じると、快感に身を委ねた。 >>NEXT |
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